ある実業家の話 2
J・R・シンプロットはかつてのフロンティアに幌馬車でやってきて川沿いのヤマヨモギを切払い、世の中が大恐慌時代に入ろうとする時にビジネス帝国の建設へと船出し、齢70歳台に達してからさらに半導体企業の創業に2兆ドルを賭けました。
・・・彼の偉さはどこにあるのでしょうか?
これは昔からよくある赤貧から大金持ちへの物語であって、現実のアメリカの抱える問題には関係のない話だ、と識者には思われるかもしれません。
・・・たしかに、同業者やワシントンのコンサルタントあたりから見れば、個人の富のロマンスなど世界経済のかかえる大きな問題の理解にとって邪魔物でしかないでしょう。
いわゆる〈企業家の神話〉はせいぜい暗い未来をなぐさめる子守唄として役立つぐらいだというのが学者たちの意見です。
つまり、もはや〈カウボーイ資本家〉の素朴な男っぽい勇気に頼って成功を求めることができなくなった現代では、責任回避と欠点が目立つ官僚機構の中でしだいに強まる個人の無力感からお人好しの目を逸らせるエピソードにしかすぎないということです。
現実の経済は、有能なアナリストによれば、互いに競争関係にある多国籍企業、国家の産業政策、そしてマクロ経済学の潮流によって成り立っていて、これらは個々の企業家の素朴な力や熱意などを圧倒してしまうのです。